ポルシェ原理主義:その壱~911や、ああ911や、911や~

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ポルシェ911GT3「フェラーリがどんな車を出そうとも、世界一偉大なるメーカーはポルシェである。ポルシェはポルシェであるがゆえにやることなすこと全て正しい」

こういうことを真顔で言うヤツを、「ポルシェ原理主義者」と言う。まあわたくしのことなんですが。

ポルシェの歴史は、第二次大戦目前のドイツにおいて、ヒトラー総統の依頼でフォルクス・ワーゲン(=ドイツ語で「大衆車」)を開発し、戦時中はそれをベースに数々の軍用車両を生み出したフェルディナント・ポルシェ博士がその始まりのような印象があるが、実際にポルシェという会社が立ち上げられたのは戦後であり、しかも創設者は息子である。


ポルシェ911会社創立以来、一貫してスポーツカーとモータースポーツを身上とした車作りをしてきたポルシェが、1948年に初めて出した356から15年目の1963年にして満を持して世に送り出したスーパースポーツカーがポルシェ911である。そしてポルシェはあまりにスーパーで素晴らしすぎるこの911を、マイナーチェンジとモデルチェンジを繰り返しながら、現在に至るまで実に45年に渡って作り続けている。


水平対向エンジンをリアにマウントするそのスタイルは、時代がどう変わろうと頑固に変えず、化け物じみたトラクションを地面に叩きつけて蹴飛ばされるような加速をする車を作る事しか考えてなかったポルシェは積極的にモータースポーツに打って出て、サーキットで培ったノウハウをまた市販の911にフィードバックする。その繰り返しで1973年に2.7リッター210PSにパワーアップされた2687cc空冷水平対向6気筒エンジンを搭載したカレラRS2.7が登場する。このカレラRSをさらに煮詰め、エンジンを230PSにパワーアップしたほか、フェンダーもワイドになり、フロントバンパー/リアスポイラーもさらに大型化されたカレラRS3.0が1974年に登場したことで、911は一定の完成をみることになる。

ポルシェ911またこの時期に、911はここまでにしようと思ったのか、高級車路線に色目を使った928というのを同時に発表する。今までの911の流れをまるでなかったことにするかのように928は水冷V8エンジンをフロントに搭載し、サスペンションは前輪がウィシュボーン/コイルで後輪はトレーニングアーム/コイルでリアにはヴァイザッハ・アクスルという後輪をより安定させる足回りが採用され、内装はあくまで高級な、しかし走りはまごうことなきポルシェであるこの928はユーザーよりも、世界中(アメリカは除く)の自動車会社に強い影響を与えた。しかしセールス面では911を越えることはついにかなわず、928は姿を消し、ポルシェはまた911に力を入れることになる。

しかし、1990年代の前半にポルシェは未曾有の経営危機を迎える。ポルシェの大きなマーケットである北米市場において売り上げの下降に歯止めがかからなくなった。ポルシェの技術の最高峰であり、ポルシェ自身と言っても過言でない911ですらがさっぱり売れなくなってしまったのだ。

ポルシェ911いかにポルシェが、モータースポーツの世界でトロフィーでボウリングができるくらいに勝ちまくっていても、肝心の乗用車の売り上げが不振だとそれは会社存続の危機である。これがマセラティとかランボルギーニとかだったら、「そのうちまたどっかがうちを買収してくれるってばぁハハハ」とのんきに構えているところだが、ポルシェはこの苦境を打開するために、なんとトヨタから経営陣を招き(資本関係はない)、トヨタ式経営に切り替える。

有名なかんばん方式による「カイゼン=改善」である。


ポルシェ ボクスター
かんばん方式によるポルシェの大きな変化は、「部品の在庫は最小限にとどめる」「共通のパーツを多用する」ようになったということである。部品はつねに必要最小限の発注に抑え、毎回毎回パワートレインとシャーシを新たに開発したりせず、あれに使ったパーツをこっちにも使うという、トヨタに限らず日本のメーカーだったら当たり前にやってる生産方式を取った。

逆に言えばいかにポルシェが「頑固一徹技術最優先採算はあとからついてくる」思想で車を作っていたかがわかる。

そうして生まれたのが「超廉価版911」とも言えるボクスターである。元々944の後継車種として考えられていたこの車は、実に良く売れた。例えて言うならめったに捕まえられないライオンの代わりに手軽なネコをたくさん売ることにしたようなもんか。

ポルシェ911トヨタの経営方針を取り入れ、徹底的なコスト管理と合理化を取り入れる過程で、ポルシェは自社の旗艦とも言うべき911の開発にもメスを入れる。93年の993を最後に、空冷エンジンを捨て水冷エンジンに切り替えたのだ。元々928などで水冷エンジンも作っていたからノウハウはあっただろうが、30年目にして初めてポルシェは空冷の911に別れを告げたのだ。そして、やがて駆動方式もRRから4WDに進化させて行くことになる。


お手軽なボクスターの大ヒットにより、ポルシェは完全に息を吹き返し、水冷4WDとなった996は、それまでの911シリーズが恐ろしくコストと手間をかけて作られていたのに対し、トヨタのかんばん方式にならい、車体のフロント部分がボクスターと共通のものを使用したり、コストカットに成功した。心なしかこの時期のポルシェがちゃっちく感じるのだがそれは気のせいである。たぶん。

ポルシェ911
そうして2004年から現行の997モデルがデビューするのだ。さすがに下位モデルであるボクスターと外見まで共通にしてしまうのはあまりにも節操がなさ過ぎると気付いたか、フロント部分を大幅に変更してある。また、時代の流れとして大排気量スポーツカーの変速機のパドルシフトによるセミオートマチック化が進んでも、「我々にはティプトロニックがある」と言わんばかりに、それに追従することもなく、頑固にMTと、ティプトロニックによる変則形式を貫くあたり、「頑固さ」と「自社の技術への矜持」は健在だ。なぜならばポルシェはポルシェであるがゆえに、やることなすことすべて正しいのだから。だからこそ信者はどんな911だろうがひとたび走っているお姿を見かけたら、その(もしかしたら自分にしか見えない)威光に、恍惚と目を細めるのだ。まあわたくしのことなんですが。

ポルシェ911

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このページは、kanazoが2008年1月17日 00:27に書いたブログ記事です。

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