2008年12月アーカイブ

さて、ほとんど恐慌状態とも言える日本の、さらに阿鼻叫喚状態の自動車産業だが、ついにフェアレディ370Zがデビューした。別に開発段階でこの不景気を予期していたわけじゃないんだからしょうがないんだけど、この車あまり売れそうにない。

フェアレディ370Z
フェアレディ370Z


もう今さら日産に直6を期待している人間もいないだろうから、V6であることには特に異存はないんだけど、やっぱNAっていうところに軽い失望は否めない。

この3.7LのNAエンジン「VQ37VHR」は、VVELなるシステムが採用され、アクセルペダルの踏み込み量に応じて吸気バルブの作用角とリフト量を可変制御することによって、Z33に比べて20馬力あまりアップした335馬力だそうだ。

しかもこの車、車重は同じなのだが全長とホイールベースがそれぞれ約10cm縮めてあり、その分トレッドを若干広げてあるのでイメージ的には「正方形を目指す」作りになっている。なんか最近の車ってこのパターン多い気がするが。オーバーハング嫌いというか。

馬力を上げてホイールベースを縮めるっていうのはどうなんだろ?直線番長だったら日産の場合ツインセラミックターボでなくNAでそんなもん作られてもあまり嬉しくない。


フェアレディ370Z
ただ、この370Zから搭載される新機能で注目なのは、シンクロレブマッチシステムである。

これは走行中にギアチェンジの際、電子制御による自動ブリッピング機構などが働き、一瞬にして選択ギアに対する最適なエンジン回転数制御が行われるという代物である。ようするにヒール&トウの必要が無くなるというわけだ。

ただこれ市街地走行の場合はどうなるんだろうなあと思ってたら、なんとこれを解除することもできるという。いたれりつくせりだね。

そして僕が個人的に一番評価したいのは、リアゲートとリアフェンダーのカットラインがルーフからテールレンズまで一直線で結ぶデザインに変更された点だ。これはかっこいい!タイヤサイズは225/45R18・245/45R18から245/45R18・265/35R19に変更されているが、それでも小さく見えるくらいにリアフェンダーのふくらみが強調されている。
フェアレディ370Z
マフラーの出し方もなかなか良く、エアロパーツも色々なパターンが出てきそう。リアスポイラーはこのまま小さくてもいいかも知れない。

ベクターW8今でこそアメリカにもサリーンみたいな欧州テイストのスーパーカーがあるが、昔のアメリカのスーパーカーと言う概念は、OHVでボンネットからスーパーチャージャーが突き出ててというパターンが多かった。もちろんノンターボである。なんかアメ車はターボ嫌いな部分があったし、今でもそう多くはない。

しかし、今から約20年前に発表されたこのベクターW8という車は、非常に欧州っぽくてそれでいてアメ車らしさを残した車だった。


ベクターW8エンジンはシボレー用アルミブロックOHVでV8ツインターボを組んでミッドシップに配置して、公称スペックは600馬力以上で最大トルクは5000rpmで80kg。うーん。しかしシャシーはハニカム材のフロアにアルミパネルを航空機用リベットと接着剤で組み立てたモノコック。うわあ怖えぇ!走っているうちに炎上してしまいそうなところまで欧州車を意識しなくていいのに。
しかもミッションはマニュアルではなく3速ATである。それで最高速度352km/hって言うのはあまりにも大風呂敷が過ぎたんじゃないだろうか。

ベクターW8

V8エンジンはミッドシップに横置きである。えーっと手前に見えているのはミツバチの養殖でもしてるんでしょうか。インタークーラーにも見えるんだけど、こんな部分に配置してまともに冷却効果があるとは到底思えません。

足回りはフロントはダブルウィッシュボーンでリアはドデオンアクスル、要するに半独立式。レーシングカー的な足回りだが、ロータス・スーパー7ならともかく、この車だと絶対曲がらないんじゃないだろうか。

ただし、全長に対してエンジンのマウント位置が思いっきり前に出ているので、重心は確かに良さそうである。この車を作ったワイガルドという人は元々航空関係の仕事を志していたそうで、まさしく離陸するような車を作りたかったんだろうなあ。なので、この車の発想そのものは随所に斬新なアイデアがある。



メーターパネルにはCRTディスプレイが採用され、車内の「管制」を行い、基本的にはレバーではなくボタンによる操作を行うという発想は30年前に「こちら葛飾区亀有公園前派出所」に登場しているのだが、あれに近いものを始めて実現しているのだ。


w8_4.jpg

写真ではちょっと分かりづらいが、フロントガラスを思いっきり傾けたはいいけど車内のラグジュアリー感との折り合いをつけそこなったしわ寄せが不自然にでかいダッシュボードに行っており、この車のダッシュボードはマージャンが出来そうなくらい無意味に広い。しかもフロントガラスがぎりぎりまで傾いているから携帯なぞ置こうものなら二度と取れないところまで滑り込みそうである。



この車がデビューしたとき、アメリカの有力な自動車雑誌「Auto week」誌はワイガルドとベクターを「ピーターパンとネバーランド」と称して、この車の開発に関するあまりに非現実的な荒唐無稽なプロジェクトを批判して、訴訟になったという。ダメだよ君達そんな本当のこと言っちゃ。

そして実際プロジェクトが大風呂敷だったものだから、ベクターは経営に行き詰まりWX-3というモデルを発表してからインドネシアのVpowerという会社に買収される。ちなみにこの会社は同時にランボルギーニも買収しており、ベクターはWX-3にディアブロのエンジンを搭載したM12モデルを発表したところで経営にまたもや行き詰まり、今度こそ遂に力尽きる。

ベクターW8
Vpowerに買収されたと同時に同社を去った創業者ワイガルドは、水上バイクのメーカーを新たに設立して、やがてベクターの商号を10数年かけて取り戻し、性懲りも無く…いや変わらぬ熱意で再び車を作り始めた。それがこのベクターWX8であり、WX8は2007年のLAモーターショーでデビューしており、2010年までに市販される見通しだと言う

でもこの車のフロントって妙にスープラに…いや何でもないです。
ベクターWX8