2011年7月アーカイブ

アメリカ人の自動車哲学っていうのに対するわたくしの印象と申しましょうか先入観と申しましょうか偏見を述べるならおおむね以下の通り。

フォード・ムスタング
OK!大出力のエンジン作ったぜ!
ボディとシャーシの剛性がもたなくなったよ
OK!補強して頑丈なの作るぜ!
今度は大きさと重量が凄いことになったよ
OK!エンジンのパワー上げるぜ!
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まあこんな感じで、大抵のことを力技で何とかしてしまうのがアメリカなわけですな。
ただ、人間でも「敏捷に動けるデブ」と言う人がいるわけで、相撲取りなんかがその代表例で、結果的に引退するハメになった朝青龍のモンゴルにおけるサッカー映像なんか、非常に華麗なボールさばきを見せていたように、車でも「デカイ・重い」イコール必ずしも鈍重とは限らないんだな。

フォード・ムスタング
というわけで、このフォード・ムスタングはアメリカのスポーツカーの中でも屈指の「動けるデブ」なわけで、競技用車両としても活躍中である。

ただ、歴史が古い分ずいぶんとアレなというか、ショボいヴァージョンをリリースしていた時期があって、80年代から90年代のそれはまさに暗黒の歴史と言っていいくらいに大衆化というか、キャロル・シェルビーには見せたくないムスタング達であった。

フォード・ムスタングそんな90年代のファミリーカーみたいなムスタングをなかったことにするかのように、2005年に登場した6代目のムスタングは、70年代のテイストを思いっきり引っ張ってきた。
そして巨大化も忘れてなかった。
そこは忘れてもよかったんだぞ。

ムスタングの凋落は日本車の台頭って言うよりもフォードからのアイアコッカ退陣と重なるんで、「やっぱりアイアコッカのいた時代は良かったよね」ということなんだろうな。


フォード・ムスタング ブルーエンジェルス仕様
そして原点回帰とも言うべきこのムスタングは、ムスタングのムスタングたる所以である「でかい」「早い」「安い」の三拍子揃ったスポーツカーとして21世紀に復活して、二代目ナイトライダーにまでなってしまった。



ちなみに前述のアメリカ人的自動車哲学を突き詰めると、下記の写真のような状態になる。
どこまでも巨大なボディにどこまでも化け物トルクのエンジンを載せた超フロントヘビーな車のフルスロットルである。

フォード・ムスタングだけどこういうバカっぷりは決して嫌いではない。むしろ自動車発祥の国だからこそのバカっぷりなのかもしれないのだから。

フォード・ムスタングちなみに近年は「ムスタング」ではなく「マスタング」と呼ぶのが正しいようなのですが、本文中では敢えてかつての呼び名である「ムスタング」で統一しました。
自動車最高速度のギネス記録は、それまでSSCアルティメットエアロが持っていた412km/hを塗り替えて今のところブガッティ・ヴェイロンの431km/hなわけで、うちのブログでも、かつてこの記事で紹介したことのあるSSCなのだが、やっぱり腹の虫が収まらなかったらしく、新たにこのSSCトゥアタラでギネス記録の塗り替えに挑むらしい。いいぞ、相変わらず不毛で。

SSCトゥアタラ
"トゥアタラ"というのは、オーストラリアだかニュージーランド原産のムカシトカゲという意味で、2億年に渡ってほとんど進化をしていない生きた化石と呼ばれているらしい。究極とも言えるこの車にその名を付けるのは、「種としての完成型」を標榜してるってことなのかな。

ポルシェ、フェラーリ、マクラーレンの順番に降りた感のあるこの最高速競争なんだが(ランボルギーニはアウディにダメって言われて始めっから不参加と僕は認定してますが)、なんだか車というより人類が到達し得ないような境地に行ってしまったヴェイロンをこのSSCは引き続き追いかけていたのである。

SSCトゥアタラ
こうして見ると、グランドイフェクトが相当効きそうなデザインなんだけど、フロントのデザインがちょっと俺の嫌いなあの車に…いやなんでもないです。

詳しいスペックはわからないんが、たぶんGM製V8にツインターボ組んでボディはフルカーボンってとこでしょうか。余計なお世話だけど、400km/hの速度域でこのワイパーはちぎれて飛んでいったりしないのかしらん。

SSCトゥアタラこの車、確かにかっこいいんだけど、なんか街中で乗ったら「恥ずかしい」気持ちになるんだろうなあと思うんだが、この車のかっこよさって言うのは、いわゆる我々が手にすることのできる現実世界の美意識に存在するかっこよさではなくって、特撮ヒーローのようなフィクションの世界のかっこよさなわけだから、それもまたいたしかたなしですな。

SSCトゥアタラ
しかもこの車に似合うのって、主人公のヒーローじゃなくって、強大な力と邪悪な野望を持った気位の高い傲慢な悪の組織のボスに似合いそうな気がする。

おお!まさにアメリカそのものじゃないかっ!!
嘘ですすみません。オペレーショントモダチありがとうございました。
フェラーリ308GTB
今も昔もフェラーリって車は扱いにくい上に壊れやすいと言われているわけだが、実際には近年のフェラーリは昔ほど気難しい車ではなくなっていることはあまり知られていない。

もちろんエアコンかけたらバッテリーがあがるだの、謎の白煙が上がるだの、最近では突然炎上が相次いだ458イタリアのケースもあり、その辺は国産車と比べてはいけません。あとボルボとかともね。あくまでも「フェラーリの歴史の中で」と言う意味ですので。

実際にはいつからフェラーリは、扱いやすくなおかつ壊れにくくなったかと言うと、テスタロッサ(もしくは328)を境に、フェラーリは急に乗用車としての自分を意識し始めて、それ以降のフェラーリは急速に乗りやすくなって行く。なんとなくエンツォの死後と言えないこともないんだけど。

つまり、「オーナーを使役する車」ではなく「オーナーが(遠慮がちに)使役する車」となったのである。これはすごいぞ?今まで観光客を襲って食べ物を奪っていたサルが突然知恵の輪を始めるみたいなとんでもないことなのだ。

さてこの308GTBだが、登場は1975年だから当然テスタロッサなんざピニンファリーナのアトリエの図面に過ぎなかった頃なので当然「オーナーを使役する車」である。

フェラーリ308GTB
この車の凄いところは、初期生産モデルのボディがグラスファイバーで出来ていることである。しかもそれは別にフェラーリらしいお題目の「軽量化」などではなくスチール製ボディの生産が間に合わなかったからなのである。しかも1975年のイタリアのFRP成型技術なんてたかが知れてるから、この車は当然のようにボディに個体差が存在する。

たぶん「ま、いっか」でラインオフしたんだろうな。


フェラーリ308GTB
70年代ですから当然フェラーリは512だの365だのデイトナだのの12気筒軍団をオラオラさせていた時代なわけで、そんな中でウェーバー製キャブレターを載せた255馬力のV8エンジンは、非力に見えないこともなかったが1050kgのボディが分解するんじゃないかって位の加速を、咆哮をあげながら見せつける車であった。

あとよく考えたらこの車ってあと50kg絞ったら重量税いらなかったのかな。



フェラーリ308GTB
ちなみにこの時代のフェラーリを愛する人に、おおむね共通するところなのだが、妙に詩的で妙にマゾヒスティックなところがあり、エンジンをかけるときも、それを儀式めいた表現をしたがり、エンジンがかかれば「V8の跳ね馬の目覚めを目の当たりにする」とかって言い回しが好きだったりするんだな。

そういや80年代のCar Graphicとかそんな感じだったな。

ただこの時代のフェラーリの美しさっていうのは、もうとんでもないくらいだった。この車のエアインテークのえぐれ具合なんかこの角度から見たらもう鼻血出そうにかっこいい。

フェラーリ308GTB

フェラーリ308GTB

ライオン(しかも腹空かせてる上に手負い)のような凶暴な車がBBだとすれば、この308GTBはさしずめ猫と言ったところなのだが、それでも爪の鋭さは充分に危険な猫だった。

そしてこの猫は75年の発表以来、マイナーチェンジを繰り返し、実に85年まで生産が続けられたんだから、やっぱり70年代フェラーリの名車なんだろうなあ。


この車は328の登場とともに生産が終わる。そして、フェラーリはエンツォが死に、日本のバブルとも重なって、商売っ気に目覚めたり色々と激動の90年代に突入して行くこととなるのだ。
フェラーリ308GTB